東京・羽田空港の滑走路で日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機同士が衝突、炎上し5人が死亡した事故で、管制官が海保機の出発順を繰り上げ、優先的に離陸させようとしていた可能性があることが9日、関係者への取材でわかった。
国交省が公表した交信記録などによると、海保機が、滑走路を担当する「飛行場管制(タワー管制)」の管制官とやり取りを始める前、現場となったC滑走路の手前にある誘導路上にはすでに外国の旅客機がいた。
関係者によると、タワー管制の管制官は、外国機の後にやり取りを始めた海保機に対して「ナンバーワン」と伝えており、被災地支援に向かう海保機の出発を優先させた可能性があるという。
管制官が海保機に、滑走路への進入や離陸を許可した交信記録は確認されていないが、海保機の機長は事故後、海保の聞き取りに対し「進入許可が出ていると認識していた」などと話したという。
国交省は9日、緊急の対応策として、出発機に対して「ナンバーワン」など離陸順序を示す情報の提供をやめると明らかにした。全空港で実施する。担当者は、離陸順序を伝えたことが事故の原因かは特定できていないとしたうえで「可能性を否定できない以上、順序の伝達をやめるべきだと判断した」と述べた。
また、事故後、羽田空港では滑走路に入る航空機の監視システムを常時確認する人員を配置。監視システムが導入されている6空港(成田、中部、大阪〈伊丹〉、関西、福岡、那覇)でも同様に配置する方針という。
誤進入防止のため、羽田空港には2010年から監視システムが導入されていたが、管制官が、両機が滑走路上で接近することを示す画面上の色の変化に気づかなかった可能性があるという。
このほか、滑走路進入に関する管制用語のパイロットへの周知徹底▽滑走路手前の停止線を夜間でも見えやすいよう塗り直し(主要8空港)▽管制官とパイロットの交信について緊急会議を開く(同)などの対策をとる。
有識者らによる対策検討委員会も立ち上げ、パイロットと管制官に対する注意喚起システムの強化なども検討する方針で、12日に詳細を発表する。斉藤鉄夫・国交相は「国土交通省の総力を挙げ、航空の安全安心対策に取り組む決意だ」と述べた。
警視庁は9日、JAL機と海保機の現場検証を実施した。(角詠之)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル